離婚して一年、ふみののもとに届いたのは謝罪の言葉ではなかった。 茶色い封筒の中身は、元夫・秀治が記した一冊の家計簿。五十二歳になった今も、その門ばった字はすぐにわかる。四月の食費、五月の惣菜、六月の修繕費――帳面には、別れた後に初めて見えた彼の暮らしが静かに並んでいた。 だが、読めば読むほど胸に残ったのは理解ではなく、昔の悔しさだった。自分の服より先に、いつも彼の作業着が置かれた日々。急ぎの修繕を引き受け続けた二十五年。 けれど七月のページで、水色の布と写真を見つけた瞬間、ふみのの中で何かが変わる。嬉しかった記憶も確かにあったのだ。 翌週、彼女は緑の布を抱え、教室へ向かった。自分のための一着を縫うために。家計簿は棚へ戻し、彼女は初めて「今の暮らし」を自分の手で選び始めた。