1995年2月、早稲田大学の卒業式。 24歳の卒業予定者の青年は、内定先も決まり、会場には大阪から始発で駆けつけた両親が静かに席を守っていた。名前が呼ばれる。だが、壇上に上がるはずの本人だけが、どこにもいない。再び呼名されても、空席は最後まで埋まらなかった。式後、会場の隅に残されていたのは、きちんと畳まれた黒い卒業マントと、整えられたままの私物だけ。争った形跡も、金銭トラブルもなく、警察は家出と結論づけた。それから10年。2005年春、定年を控えた老教授が、ついに警察署を訪れる。彼は長い沈黙の末、あの日の青年に関わるある事実を口にした。なぜ青年は卒業式で消えたのか。 老教授は何を知り、なぜ10年も黙っていたのか。 封じられた真実が、静かに動き始める。