佐藤名古屋の配車室は、まだ電話とホワイトボードだけで回っていた。だが本社は、来月からAI配車へ完全移行し、この部署をなくすと通告する。長年現場を支えた荒木にも、配置転換の名目で居場所は消されようとしていた。 しかし台風が再接近した夜、AIは川沿いの危険を見落とし、全ルート通行可能と判断する。荒木は即座に「そこは行くな。水はデータより先に来る」と叫び、国道へ迂回させた。さらに地図を読み、インターを一つ先で降りさせ、所沢や川越の順まで細かく指示する。 結果、遅延と損害が出たのはAI便だった。一方、荒木の判断で主要取引先は救われ、現場の知恵こそ必要だと本社も認める。やがて再構築プロジェクトが始まり、エリートは荒木に頭を下げた。「担当を頼む」――「俺は現場しか知らない」。その答えに、ようやく本当の答えが返る。