なぜ日本一の富士山は、あの巨大な溝の上に立っているのか。答えは、地図に映らない地下の傷にある。 本州の真ん中を南北に走るフォッサマグナは、場所によって深さ6000メートル以上。しかし、標高データで見ても、その姿は山や盆地に埋もれ、輪郭だけが隠れている。見えるのは、溝の上にそびえる富士山だけだ。 一方、西日本には、定規で引いたような一直線の谷がある。中央構造線に沿うこの谷は、砕けた岩を川が削って生まれた断層谷で、千キロにも及ぶ。 ナウマンが見抜いた古い傷と、列島が大陸から離れる際に生まれた裂け目。二つの時代の裂け目が重なった先に、富士山は静かに築かれていったのである。