日本にトラがいない理由は、単なる「海があるから」ではありませんでした。 二万年前の氷期、日本列島の一部は大陸とつながっていたものの、トラに適した森の道はつながらず、草原を好むライオンだけが本州へ南下できたのです。長く「トラの骨」とされた標本も、2026年1月のDNA再解析で正体はライオンと判明しました。栃木、静岡、山口、そして青森の骨まで、すべて別の動物だったのです。日本の山にトラが現れなかったのは、進める道が最初からなかったからでした。そして今、その不在が思わぬ形で続いています。トラという頂点捕食者がいない日本では、シカやイノシシが増え、農作物被害は深刻化しています。 かつて来られなかったトラ、代わりに歩いていたライオン。その真相は、日本列島の地形と気候が作った、静かな歴史の証明だったのです。