山奥なのに、一時は1万人を超える町が誕生した――そんな信じがたい事実が、日本にはいくつも存在する。 交通も生活も不便なはずの山間部に、人々が集まった理由はただ一つ。そこに巨大な産業があったからだ。栃木の足尾では銅山が町を押し上げ、最盛期には3万人超が暮らした。長野の上松では木曽ヒノキが人を呼び、森林鉄道が生活圏を広げた。群馬の嬬恋では高原キャベツが農村を変え、夏秋キャベツの一大産地となった。白馬はスキーブームで観光地へと変貌し、佐久間ダム建設では工事関係者が山里に巨大な人口を生んだ。さらに秩父はセメント、夕張は炭鉱、そして松尾鉱山は「雲上の楽園」と呼ばれるほど整った暮らしを築いた。 山奥の町は、資源と需要が生んだ一瞬の繁栄の証だった。