本州の地図上で、太平洋へと突き出したお馴染みの「伊豆半島」。一見すると本州の一部に見えるこの地ですが、その足元には日本の地理の常識を覆す驚くべき秘密が隠されています。実は伊豆半島は、もともと日本列島の一部ではありませんでした。遥か南の海に浮かぶ「火山の島」として生まれ、プレートの移動に伴って長い旅を続け、およそ百万年前に本州へと衝突した外来の島なのです。その証拠に、伊豆の西にある駿河湾と東にある相模湾という日本有数の深い溝(トラフ)が、この半島を挟み込むように走っています。これらはまさに異なるプレートの境界線であり、本州の中で唯一「フィリピン海プレート」という南からの海の板に乗っている伊豆が、そのまま本州に「突っかかった」ことで形成された衝突の痕跡です。さらに、海から遠く離れた伊豆の山中からは、かつて熱帯の浅い海に生息していたサンゴや貝の化石が発見されており、この半島が南方から来た旅人であったことを雄弁に物語っています。駿河湾の底にそびえる日本一深い海底から、地上にそびえる天城山、そして今なお活動を続ける火山や豊かな温泉の恵みまで——。地図の裏側に隠された、南の海から来た島の壮大な歴史が、今日の伊豆の姿を形作っているのです。