アメリカ東海岸、ジョージアからノースカロライナに及ぶ約830キロの海岸線は、日本の約半分の広さを誇る大いなる大地でありながら、海沿いに大都市が一つも存在しない特異な空白地帯となっています。その背景には、まず自然の地形が大きく影響していました。北部のニューヨークなどとは異なり、この地域には砂の島や浅い湿地が広がり、大型船を迎え入れる深い天然の港を築くことが困難でした。また、内陸へ続く河川も急な流れに阻まれて航行が難しく、物資の流通網として機能しにくかったのです。歴史的要因も見逃せません。かつて海沿いの富は米や綿花の大規模農園に集約され、都市としての多角的な発展が妨げられました。そして決定的な転換点となったのが鉄道の敷設です。綿花輸送をきっかけに、内陸の交差点として誕生したアトランタやシャーロットが発展を遂げ、港町を凌駕する巨大都市圏へと変貌を遂げました。現在、海岸線は美しいリゾートや観光地として賑わいを見せるものの、主要な産業や巨大な人口は内陸の帯状エリアに集中しています。深い港や航行可能な川の有無、そして鉄道網の敷かれ方が、何世紀もかけて街の命運を決定づけてきたのです。