東南アジアの中心で隣り合い、ともに豊かな仏教文化と大河が育んだ平野を持つタイとミャンマー。かつておよそ100年前の経済水準ではミャンマーの方が優位にあったにもかかわらず、現代の私たちが見る両国の姿はあまりにも対照的です。タイの首都バンコクがアジア有数の近代都市として発展を遂げた一方で、ミャンマーは長く続く内戦と政治的混乱の中で深刻な苦境に立たされています。この運命の分かれ道を決定づけたのは、幾重もの歴史と地形の選択でした。タイは、チャオプラヤ川がもたらす広大な中央平原とタイランド湾への海の玄関口を巧みに活かし、欧米列強の植民地支配を回避しながら世界との協調路線を選択しました。数々の政治的動乱を乗り越えながらも「外の世界と繋がる道」を閉ざさなかったことが、現在の確かな繁栄を築き上げました。他方で、ミャンマーは複雑な山岳地形に多くの少数民族が点在し、かつてイギリスの植民地となった後に孤立主義や軍政への移行という険しい道を歩みました。豊富な天然資源に恵まれているものの、その富が内戦の資金源となる「資源の呪い」に苦しんできた歴史があります。川を一本挟んだ国境の街が現在の両国の光と影を映し出すように、国家の命運はまさに「どのような道を選ぶか」に託されているのです。