北極圏の果てに広がる世界最大の島、グリーンランド。日本のおよそ5.7倍という途方もない広大な国土を持ちながら、そこに暮らす人々はわずか5万6千人余りにすぎません。その人口密度は世界でも類を見ないほど低く、この巨大な島が「空っぽ」である理由には、単なる氷の世界というだけではない深い歴史と地理的背景が隠されています。国土の約81%を覆う厚さ数キロの巨大な氷床に加え、東海岸を閉ざす冷たい海流が、古来より人々の定住を拒んできました。温かい海流の恩恵を受ける南西部のわずかな海岸線に、首都ヌークをはじめとする限られた町が点在するのみです。さらに、険しいフィヨルドと氷河に阻まれたこの島には、街と街を結ぶ道路が一本も存在せず、すべての移動は海と空路に依存しています。バイキングの時代から続く過酷な自然との闘い、そしてデンマークとの歴史的変遷を経て、人々は漁業や限られた公的部門に支えられながらも、海と共に生きる独自の暮らしを紡いできました。道のなさ、寒冷な気候、そして海流が形作ったこの孤立した島は、厳しい自然の掟と人間の営みが交差する、地球上で最も神秘的なフロンティアであり続けています。