老後に葬式を終えてから、家族がいちばん困る物――それは、意外にも「残された手がかりのない日常」だった。 見送りを終え、ようやく家に戻っても、片付けの手はすぐに止まる。引き出しを開けた瞬間、本人に聞けない現実が重くのしかかる。第三位は、何の鍵かわからない鍵の束。机の奥から小さな鍵が何本も出てきても、物置なのか、自転車なのか判断できない。何を開ける鍵なのか、一言あれば迷わずに済む。 第二位は、家族が開けられないロックされたスマホだ。大切な連絡先も思い出も、その中にしかない。親しかった人へ知らせたくても、誰に連絡すればいいのか家族には分からない。 そして第一位は、何の支払いか不明な毎月の引き落とし。通帳には見覚えのない会社名と金額だけが残り、契約内容を探すところから始まる。 だからこそ、家族が分かる手がかりを残すこと。それもまた、最後にできる思いやりなのである。