もし三万年前の日本へタイムスリップしたら、原始人は洞窟でマンモスを追う――そんな想像は、実際とは大きく違っていました。舞台は今の静岡県、秋の明日香山周辺。午前五時、まず襲うのは寒さです。氷期の日本は今よりずっと冷え、海面も低く、本州・四国・九州は陸続きでした。人々は洞窟ではなく、見晴らしの良い大地にキャンプを張り、石の欠片を残して暮らしていました。午前八時には、静岡で多く見つかる落とし穴を使い、鹿を狙う。走り回るのではなく、地形を読み切る計画的な狩りです。午後には黒曜石が届き、遠い産地との交流も見えてきます。夜は焚き火を囲み、物語を語り合い、静かに眠る。そして火山灰が降っても、彼らは生き延びたのです。想像よりずっと賢く、たくましい一日でした。