悦子、63歳。四国の小さな町で学校給食の仕事をしながら、88歳になる母・豊さんの介護費用を支えていました。母は2年前から特別養護老人ホームで暮らしており、年金は月約7万円。施設費は食費や居住費を含めて月15万円ほどかかっていました。兄は「足りない8万円は俺とお前で半分ずつ出そう」と言いました。悦子は母のためならと、手取り13万円の中から毎月4万円を兄に渡し続けました。1年半で合計72万円。その間、暖房を我慢し、友人との付き合いも減らしました。そんなある日、母の部屋を片付けていた悦子は、小さな引き出しの奥に7通の未開封の封筒を見つけます。差出人は市役所。中には「高額介護サービス費」の申請書が入っていました。7か月分、すべて手続きされないまま残されていたのです。翌日、悦子は封筒と施設の請求書を持って市役所へ向かいました。そこで知ったのは、介護費の負担には上限制度があり、さらに施設の食費や部屋代を軽減できる制度もあるということでした。母は対象となっており、月15万円だった請求は約8万8千円まで減額。さらに払いすぎていた分も母の口座へ戻ってきました。兄に伝えると、しばらく黙った後、「役所に相談したら、母さんが困っていると思われるのが怖かった」と本音を漏らしました。実は兄も自分の年金から毎月4万円を負担していたのです。