三年ぶりに訪ねてきた息子が、最初に探したものは母親の顔ではなく、通帳の場所でした。私はふみこ、七十四歳。五年前に夫を亡くし、今は市営住宅で一人静かに暮らしています。息子は東京で働いていますが、連絡は年に数回、「元気か?」という短い言葉だけ。それでも私は、いつか会える日をずっと楽しみにしていました。ある日、嫁から突然、「お母さん、老後のお金はちゃんとありますか?」と電話がありました。不思議に思っていた三日後、息子が突然家に現れたのです。手土産を持ち、優しい笑顔を見せる息子を見て、私は嬉しくて台所で天ぷらを揚げました。しかし、その時でした。タンスを開ける音が聞こえ、振り返ると息子が通帳をしまっている棚を探していたのです。「物騒だから、通帳は俺が預かるよ。暗証番号も教えて」