表彰式が終わった直後、北九州市総合体育館の通路で、イラン代表は金メダルを首にかけたまま帰ろうとしていた。 その前に、静かに現れたのが日本代表の石川祐希だった。疲れ切った空気の中、彼は一枚の紙を差し出し、「今夜、イラン代表全員をご飯に招待したいんです」と告げる。ロベルト・ピアッツ監督は一瞬、言葉を失った。「全員ですか?」 石川はうなずき、「一週間ずっと勝つ方法を研究してきました。だから今夜くらいは、ネットも戦術も忘れて、同じテーブルを囲みましょう」と静かに返した。その夜、一行が案内されたのは海辺近くの小さな和食店。派手な看板もなく、のれん一枚だけの店だった。 だが、そこには豚肉も酒もなく、イランの信仰に配慮した料理が、一品ずつ丁寧に運ばれてきた。ピアッツが「なぜ最初から全部出さないのですか」と尋ねると、石川は微笑み、「食べる速さは人それぞれです。相手を待つことも、おもてなしです」と答えた。