名古屋で張本智和に敗れた王楚欽は、帰国後の空港ロビーで激しい批判にさらされた。報道陣に囲まれ、国旗を背負ったまま現れた彼が、突然足を止め、胸元から一枚の小さな日の丸を取り出した瞬間、空気は凍りつく。彼はその旗に静かに口づけし、騒然とする記者団の前で、負けた事実は受け入れると語ったうえで、日本の観客への感謝を口にした。罵声ではなく拍手で迎えられ、試合後には誰一人騒がず、スタンドのゴミまで拾って去っていった――その光景が、彼の価値観を根底から揺さぶったという。王楚欽は、日本人観客の品格こそ真の強さだと断言した。勝敗を超えた敬意、その“忘れられない瞬間”が、彼にとって最大の教訓となったのである。