名門の若旦那・貴之は、出っ歯でそばかすだらけの娘・おふくを嫁に迎え、絶望していた。学問を志す彼には、外見も教養も欠ける妻など、到底理解できなかった。初夜、彼は背を向けて書物に没頭するふりをした。しかし、おふくはただの娘ではなかった。舅・惣菜衛門が試した時、彼女は客の体調を汗の匂いで見抜き、適切な塩水を差し出した。その深い観察力と気遣いに、惣菜衛門は「この子が我が家の嫁だ」と確信したのだ。結婚後、おふくの真価は輝き始める。姑の意地悪な料理の試練も、材料から漂う「末えた山の臭い」を嗅ぎ分け、見事に料理で克服。醤油蔵がライバルに毒を盛られた危機では、鋭い嗅覚で「あけびのつるじ」の苦みを感知し、夫・貴之と共に夜通しの見張りで犯人を捕らえた。最大の試練は、惣菜衛門が家屋の命運を賭けようとした「絹の買い占め」を、おふくが「塩を買うべきだ」と強く諫めた時だった。彼女は塩田の湿気や蟻の行動から、間もない大洪水と、塩の価値の高騰を看破したのである。その読みは見事に的中。田村屋は良質な塩を独占し、窮地を救っただけでなく、民衆から「命の恩人」と称賛されるまでになった。