「今月の仕送りはまだなのか! 家賃25万円が払えないだろ!」仕事を終えてスマホを確認した小笠原萌子は、画面に表示された異常な数の着信に言葉を失った。元夫・ヒロムから58件、元義母から42件。合計100件もの不在着信だった。しかし、萌子はもう彼らの家族ではない。なぜなら、その前日に離婚届を提出したばかりだったからだ。「離婚しましょう。今すぐに」そう告げた日のことを、萌子は今でも鮮明に覚えている。ヒロムは結婚前、自分を大企業勤務のエリート社員だと偽っていた。だが、実際は定職にも就かず、アルバイトを転々としていた男だった。その嘘を信じた萌子は、結婚後、生活費のすべてを負担することになる。家賃、光熱費、食費。そして、ヒロムの両親への仕送りまで。毎月25万円もの金額を、萌子が必死に働いて支えていた。ところがヒロムは、仕事探しを理由に外出を繰り返し、やがてアルバイトすら辞めてしまう。さらに、義両親には「大企業から役員待遇でヘッドハンティングされた」と嘘をつき、その虚像を信じた両親は高級車やブランド品、高級料理に散財していた。すべてのお金の出どころが、萌子の血の滲むような努力だったことも知らずに。決定的だったのは、ヒロムの浮気だった。ある夜、帰宅した彼の上着から知らない女性の香水の匂いがした。疑念を抱いた萌子は、財布やバッグを調べ、高級ホテルの利用履歴が残ったカードを発見する。