老後に待っている一番つらい現実は、金銭でも病気でもない。 それは、胸の奥にぽっかりと穴が開いたような、静かな寂しさである。若い頃は気づかない。しかし年を重ねるほど、会いたい人は少しずつ減っていく。 一緒に笑った友人が、ある日ふいにいなくなる。その事実は、思っている以上に心を冷やす。次に訪れるのは、「必要とされない」という感覚だ。 仕事を辞め、子どもも独立すると、自分の役目はもう終わったのかと、急に心細くなる。さらに、行きたい場所があっても階段や坂道を前にして、今日はやめておこうと足が止まる。そして一番苦しいのは、思い出を語れる相手が減り、ついには誰とも話さない日が増えていくこと。 「今日は誰とも話していない」――その気づきが、静かに胸を締めつけるのだ。