日本のテレビで「百獣の王」と呼ばれる武井壮は、圧倒的な体力と強さの象徴として知られてきた。だが、その姿の裏には、幼くして背負った深い喪失があった。9歳で母と東京駅で別れた日、それが最後の別れになるとは知る由もなかった。やがて父も家を離れ、兄ジョーと二人、貧しさの中で支え合って生きる。武井は新聞やゴミ集めで家計を支え、兄は高校へ進まず働きながら俳優の道を目指した。しかし24歳で兄は末期がんに倒れ、最後に「母に会いたい」と願いながら逝った。40年以上後、NHK『ファミリーヒストリー』の調査で、母は父の拒絶の中でも息子たちを想い続け、再婚後も武井の写真を大切に持っていたことが判明する。スタジオで彼は顔を覆い、ただ泣き崩れた。強さとは、傷を抱えたまま生き抜くことだと、彼は静かに知った。