年金月9万円で暮らす63歳の田中よしこさんは、長い間「お金がないから何も楽しめない」と思い込んでいました。一人暮らしの静かな部屋では、時計の音だけが響き、電話が鳴ることもほとんどありませんでした。しかし、ある春の日、友人の花子との再会が、よしこの人生を少しずつ変えていきます。「お金をかけなくても、毎日は楽しくできるのよ」。その言葉をきっかけに、よしこは小さな趣味を始めました。朝は自宅で15分のシニア向けヨガ。台所のネギの根元から始める窓辺の家庭菜園。古いノートに気持ちを書く手書き日記。どれも費用はほとんど必要ありませんでしたが、孤独だった時間は少しずつ温かな時間へ変わっていきました。さらに、図書館で借りた本を片手にGoogleマップで世界を旅し、スマホで近所の美しい瞬間を撮影。目的のない散歩やラジオ体操では、知らない人との小さな交流も生まれました。その後、よしこは書道、NHK語学講座、思い出の場所巡り、御朱印集めにも挑戦します。月9万円の年金生活は変わらなくても、毎日は以前とは比べものにならないほど豊かになりました。半年後、娘から「お母さん、最近すごく明るくなったね」と言われたよしこは微笑みます。