あの時代に生まれてよかった――そう振り返る声が、昭和40年代を生きた人々の胸には今も残っている。昭和45年から60年にかけての暮らしには、いま失われつつある温かさが確かにあった。近所との絆は深く、玄関を開ければ向こう三軒両隣の顔がすぐに浮かぶ。お裾分けは当たり前で、困れば自然に助け合えた。子どもたちはゲームもスマホもないまま、日が暮れるまで空き地や野山を駆け回り、遊びの中で生きる力を身につけていった。夕暮れには家族がちゃぶ台を囲み、テレビを見ながら一日の出来事を語り合う。少ない物でも心は満たされ、欲しい物を少しずつ手に入れる喜びがあった。努力すれば暮らしが上向く実感もあり、給料袋の重みが明日への希望になった。