「行き遅れのうたには交通誘導員がお似合いよ!」実家で12年間、脳梗塞の母の介護と和裁の見習いを押し付けられてきた望月歌(31)。両親と溺愛される姉・明かりは、姉が蹴った結納金300万円付きの縁談に、歌を身代わりに押し込もうと画策していた。家族から社会的に処分されるように嫁がされた歌。相手は日給制の交通誘導員と聞かされていた男、御園生(みそのう)だった。だが、地味だが誠実な夫との新婚生活が始まったある雨の日の夕方。財布に千円札が1枚しかなく、消え入りそうな声で「夕飯の買い物に行きたいんだけど……」と切り出した歌に、夫は古びた一冊の通帳を静かに差し出した。「これを開いてみて」そこに並んでいた数字を、歌は何度も数え直した。――ゼロが九つ、10億円。