山本周五郎の時代小説「若殿女難記」は、身分を偽った若者をめぐる奇妙で波乱に満ちた物語である。朗読・あべよしみによって語られる世界では、江戸時代の宿場町を舞台に、笑いと緊張が交錯する一大騒動が幕を開ける。東海道金谷宿の外れには、旅人たちが集まる華やかな一角があった。大井川の増水によって足止めされた客で賑わう中、一軒の店に毎晩通う謎の侍が現れる。立派な身なり、豪快な金遣い、そしてどこか大名の若殿を思わせる風格。しかし、その言動は品格とは程遠く、周囲を驚かせるほど自由奔放だった。だが、その若者の正体はただの遊び人ではなかった。彼は森家の若殿・大輔の身代わりとして選ばれた人物であり、家臣たちは政治的な陰謀を成功させるため、巧妙な入れ替えを計画していたのである。本物の若殿を追い落とし、偽の若殿を江戸へ迎え入れるという大胆な策略。その裏には、森家内部の権力争いと、家臣たちの野心が渦巻いていた。