十四世紀、ペストがヨーロッパを襲う。町には遺体が積み上がり、家々は封じられ、人々は恐怖のあまり体を洗うことさえ避けた。水は毒を運ぶと信じられ、犯人探しの矛先は無実の少数派へ向き、火刑が広がっていく。病そのものより、無知と恐怖が社会を壊していったのである。 しかし同じ時代の日本は違った。神道は清らかさを尊び、みそぎや手水が生活に根づいていた。寺の浴場から銭湯へと入浴文化は広がり、温泉も人々の疲れを癒した。さらに、家では履物を脱ぎ、手洗い・うがいを徹底し、江戸では排泄物さえ肥料として循環させた。 水に恵まれた島国の地理、信仰、習慣、そして暮らしの知恵が重なり、日本では清潔が自然な文化として育ったのである。