67歳の千鶴さんは、長い間胸に抱えてきた寂しさを終わらせるため、離婚届を夫・70歳のしのぶさんに差し出しました。二人は結婚40年。しかし、しのぶさんの定年退職後の5年間、寝室は別々、会話もほとんどない「家庭内別居」の状態が続いていました。千鶴さんはパートで貯めたお金と、離婚時に利用できる年金分割制度について調べ、「一人でも生きていける」と決意したのです。ところが、離婚届を見たしのぶさんの反応は、彼女が想像していたものとは全く違いました。「俺も離婚したかった」その一言に、千鶴さんの心は大きく揺れました。怒りや謝罪ではなく、夫もまた長い孤独を抱えていたのです。二人は司法書士のもとで、財産分与や年金分割について現実的な話し合いを始めました。千鶴さんは離婚後の生活に希望を見出す一方、しのぶさんの年金額では一人暮らしが厳しくなる現実を知り、初めて夫の将来を心配します。その夜、二人は40年間で初めて本音をぶつけ合いました。「話を聞いてほしかった」「優しくしてほしかった」。実は二人が求めていたものは同じだったのです。