1970年代、東京駅は今とはまるで別の賑わいを見せていた。九州方面行きの寝台特急が夜ごとホームに並び、上野駅からは東北・北海道、大阪駅からは四国や九州への列車が出発していた。当時、寝台列車は日本中をつなぐ交通の大動脈であり、人々を夜のうちに遠くの街へ連れて行った。しかし、現在日本に定期運行される寝台特急はわずか1本しか残っていない。なぜこんなにも大きく愛されていた寝台列車は姿を消したのだろうか?初めて寝台列車に乗った冬の夜、東京駅のホームに滑り込んできた深い青色の車体。その金のラインとヘッドマークが印象的だった。乗り込むと極狭の寝台が秘密基地のように心を躍らせ、列車が動き出すリズムに包まれて目を閉じた。朝目覚めたとき、広がる海の風景に感動を覚えた。しかし、2回目の乗車では、列車の揺れや狭さ、いびきや古い設備が気になり、前回の感動は薄れてしまった。時が経つにつれ、新幹線やLCC(格安航空)がより速く、安価で便利な移動手段となり、夜行列車の存在価値は薄れていった。また、老朽化した車両の維持費や運行に伴う課題が積み重なり、鉄道会社もその負担を引き受けることができなくなった。そして、人々はもう選ばなくなったのではなく、「選べなくなった」のだ。