ドイツの医師ヘンゲルベルト・ケンペルは、元禄4年(1691年)、長崎の出島から江戸に向かう途上で驚きを隠せませんでした。「どうしてこんなに人がいるのに、道にゴミ一つないのか?」と。江戸時代の日本は、当時の世界から見ても稀有な環境管理と秩序を誇っていました。奉行が整備した排水システム、さらには糞尿を効率的に利用するリサイクルの仕組みが、その清潔さの秘密だったのです。一方で、この美しい表層の裏には、もう一つの顔も存在しました。例えば、道端に晒された密貿易罪人の亡骸。ケンペルは、その秩序維持のための厳しい抑圧に唖然としました。さらに、80年後に訪れたスウェーデンの学者ツンベリーは、江戸の治安の理由に迫ります。「この国ではどうして物が盗まれないのか?」その背景には「五人組」という相互監視の制度や住人同士がお互いを見張り合う仕組みがありました。