継母の策略によって、甲府の荒物屋の娘・茜は、山奥で炭を焼いて暮らす無口な男、竜之助のもとへ嫁がされた。都では「美しい娘が炭焼きに」と憐れまれたが、茜は過酷な山暮らしの中で、荒れた手でそっと水を差し出し、病に伏した夜も黙って看病してくれる夫の優しさに少しずつ心を開いていく。そして三年後のある夜、竜之助は押し入れの奥から一振りの刀と古い書状を取り出した。炭焼きには似つかわしくない見事な拵え――。彼は静かに、自分が罪を着せられた侍の息子であり、父の無実を晴らすため身を隠して生きてきたと明かす。継母が仕組んだ不遇の婚姻は、その夜を境に、夫婦の運命を大きく変える始まりとなった。