95歳の祖母といつものように散歩をしていたある日のことだった。穏やかな時間が流れていたはずなのに、突然、祖母が何かを見つけた瞬間、顔色を変えて走り出した。驚いた私は慌てて後を追いかけることにした。祖母が向かった先にいたのは、一匹の年老いた犬だった。最初は「似ているだけだ」と思っていたが、その犬は祖母の姿を見ると懐かしそうに近づいてきた。祖母は震える声で「本当にごめんね」と何度も語りかけていた。話を聞くと、その犬は15年前、震災後の瓦礫の中から飼い主に救われた命だったという。飼い主は長い間その犬を大切に育ててきたが、犬も高齢になり、残された時間はわずかだと告げられていた。祖母はその犬を引き取り、最後の日々を一緒に過ごすことを決意した。それから毎日の散歩が始まり、犬はまるで若返ったかのように幸せな表情を見せるようになった。しかしある朝、祖母は犬を抱きしめながら静かに涙を流していた。長い年月を共に過ごした犬は、桜の木の下で穏やかに旅立ったのだった。