井上忠敬という男、彼が成し遂げたのはまさに驚異的な偉業だった。五十歳にして隠居し、普通なら穏やかな余生を送るところを、彼は自らの足で日本全国を歩き回り、初めて正確な日本地図を作り上げたのだ。彼の歩いた距離はなんと四万キロ、まさに地球一周分に匹敵する。忠敬の出発点は、千葉県の佐原。ここで彼は商売を立て直し、五十五歳から測量の旅に出た。十回にわたる全国行脚、その間の苦難は想像を絶するが、彼は71歳まで歩き続けた。彼の地図は後に、幕府だけでなく、海外の船も驚かせた。江戸時代にこれほど精密な地図が作られたことに、イギリスの測量船は測量を中止して帰国したという逸話があるほどだ。