姨捨駅に降り立った瞬間、空気が変わるのを感じた。目の前には段々と連なる美しい棚田。そして、その一枚一枚に水が張られた瞬間、まるで空の月が地上に降りてきたかのように映し出される。その幻想的な光景は「田毎の月」として名高い。特に秋の夜、満月が棚田を照らすと、その美しさは言葉を失うほどだ。この地には「姨捨伝説」という悲しい物語も伝わっている。昔、貧しさゆえに60歳を迎えた親を山に捨てる掟があったという。ある青年も母を背負い山へ向かうが、母は帰り道がわかるように枝を折って目印をつけた。母の愛に心を打たれた青年は、掟に背いて母を家に連れ帰り、密かにかくまったという。