熟年離婚直前の夫婦である私たち。ある日、地方への赴任が決まり、妻にそのことを伝えると、彼女は淡々と「一人で行ってくれば?」と言った。私、中村慶二、幼馴染の佳代と結婚して三十年、五十年の付き合いがある。しかし、会話はなくなっていた。地方での新しい生活が始まった。慣れない一人暮らしは孤独で、日々がただ過ぎていく中、ある日手紙が届く。それは三十年前、佳代が送ってきた手紙だった。それから文通が始まり、昔の思い出が蘇る。手紙のやり取りを続けるうちに、佳代が突如訪れ、笑顔で「手紙解散から来た」と言った。それをきっかけに、新しい生活が始まり、再び一緒に暮らすことになった。出会ってから何十年も経った今でも、昔のことを思い出すことで新しい生活が始まることを教えてくれたのは、あの佳代の手紙のおかげだった。