ある日、ひとつの不思議なLINEスタンプが話題になった。四十種類すべての表情が、まったく同じ「笑っていない顔」だったのだ。最初は「使いどころがないのでは」と冗談半分に見られていたそのスタンプ。しかし、ある男性にとっては、人生で大きな意味を持つ存在になっていた。その男性は、先月アルバイトを辞めようか悩むほど苦しい時期を過ごしていた。周囲から届く励ましのLINEには、明るい笑顔のスタンプが多かったが、なぜか気持ちが追いつかなかった。そんな中で出会ったのが、笑わないこのスタンプだった。その表情を見た瞬間、「無理に笑わなくてもいい」と言われているような気がしたという。作者には特別な意図はなく、ただ笑顔を描くのが苦手だっただけかもしれない。それでも、その飾らない表情が彼の心を救った。やがてスタンプ販売終了の知らせが届き、男性は作者へ感謝を伝えたいと思うようになる。実はその作者本人が、身近な人だったことが分かり、驚きと照れが広がった。