宮原亮平、31歳。食品卸会社の経理部で、数字を黙々と打つだけの地味な男だ。昼食は毎日、塩おにぎり二個。誰にも干渉されたくない、そう思っていた。だが昼休み、営業企画部の人気者・榊原千尋が突然、「宮原さん、休日何してるんですか」と聞いてきた。俺は迷わず「自分の店にいます」と答える。祖母が守ってきた、日曜だけ開く小さな喫茶店だ。彼女は驚き、その翌週、本当に店へ現れた。最初はただの好奇心だったはずなのに、榊原は通い詰め、店を手伝い、SNSまで整え始める。やがて再開発で立ち退きの話が出ると、彼女は真っ赤な顔で言った。「ここに、続けてほしい人がいます。私が嫌なんです。宮原さんと会える場所がなくなるのが」