天皇陛下とのご結婚が決まった雅子さまには、厳しいお妃教育が課せられました。特に、国語に関する講義では、一日十時間にも及ぶ集中した指導が行われ、その期間は実に六週間に及びました。長年海外での生活を送られていた雅子さまにとって、和歌の世界はまさに未知の領域でしたが、その魅力に瞬く間に引き込まれ、初心者とは思えないほどの著しい上達を見せました。  ある日、雅子さまは仁徳天皇の和歌にも用いられた「おし照る」という古典的な表現を取り入れ、天皇陛下と過ごされたひとときの情景を詠み上げられました。その美しさと表現力に担当教授は驚嘆し、「どなたかにご相談されたのですか？」と尋ねるほどでしたが、雅子さまはにこやかに「いえいえ」と答えられたそうです。  翌年の歌会始めでも雅子さまは同じ歌を披露され、天皇陛下も同じ情景を詠まれたことで、聞く人々に深い感動を与えました。お妃教育が終わった後も、雅子さまは引き続き担当教授に月一度の講義を希望され、自ら両腕いっぱいの資料を抱えて通われる熱心な姿勢を見せられたといいます。