父親が出て行き、母親が突然姿を消した中学二年の春、大東駿介は孤独な一人暮らしを余儀なくされる。母はクリーニング店で働いていたが、家を空ける時間が増え、最後には完全に帰らなくなったのだった。生活費をレジの小銭でしのぎ、学校にも行かず家に引きこもる日々。そんなある日、大東の耳に響いた「大東!」という声。それは中学時代仲が良かった友人二人組の一人だった。彼らは、学校に来なくなった大東を心配して、毎日家を訪ねてきていたのだ。だが、大東はそんな自分の姿を恥じ、訪問を無視し続けた。ある日、「ドン!」という音と共に扉が力任せに開けられ、一人の友人が「お前何やってんだ!」と手を差し伸べてきた。あの瞬間、彼らに救われたと大東は振り返る。