イタリアに住む少女、ジュリアちゃん(10歳)は、生まれつき顔を含む全身に毛が過剰に生える「アンブラス症候群」という難病と共に生きていた。その外見から、彼女と母クラウディアは日常的に心ない差別と偏見に晒されていた。美容室では入店を拒否され、小学校からは「他の生徒への影響」を理由に入学を許可されなかった。さらには、父親さえも娘を拒絶し、「お前なんか俺の子じゃない」と罵声を浴びせ、家族は離散。絶望の淵に立つ母娘に残された光は、かつてクラウディアの同僚で、何の偏見もなくジュリアに接してくれた日本人女性・和子さんただ一人だった。和子さんの勧めで、母娘は一大決心で日本を訪れる。そこで彼女たちは、差別のない人々の温かい眼差しに初めて触れた。散策中、小田原の古い町並みで出会ったのが、89歳の理容師・佐藤さんだった。彼女の店の前で戸惑う母娘に、佐藤さんは自然に声をかけた。ジュリアの病状とこれまでの苦労を聞くと、佐藤さんは驚くことも嫌がることもなく、「さあおいで、中で綺麗にしよう」と優しく招き入れた。佐藤さんは、障害を持つ自分の娘を育てた経験を語りながら、ジュリアの髪をカットし、顔の毛を丁寧に剃った。鏡に映った自分の顔を見つめるジュリアに、佐藤さんは力強く語りかける。「人に嫌がらせをすれば、いつか自分に返ってくる。前向きに何でも挑戦してごらん」。その温かい言葉と、偏見のない施術に、ジュリアの顔に笑顔が、母クラウディアの目に涙があふれた。このたった一度の出会いが、傷ついた母娘の心を癒し、「周りの目を気にせず前を向いて生きる」 勇気を与えたのである。海外では報じられない、日本人の「当たり前」の優しさが、深い絶望の中に一条の光を灯した瞬間だった。