山口百恵は、十七歳という若さで自らの人生を決断する過酷な岐路に立たされた。実父・久保繁氏が突きつけたのは、親権をめぐる争いではなく、彼女という「商品」の所有権を巡る戦いだった。裁判は泥沼化し、ついに提示されたのは、1000万円という巨額の「絶縁料」と、一つの冷酷な文書だった。その和解条項には、「今後、父子関係が存在することを認めない」という一行が刻まれていた。実の父親が、公の場で娘の存在そのものを否定することを誓約するという、尋常ならざる決別の条件。血縁という呪縛から自らを買い取るために、彼女はこの条項に署名した。スターとして輝く舞台の裏で、17歳の少女は父親に金を払い、「私という存在を認めないでほしい」と、血のつながりそのものを切り捨てる決断を下すに至ったのである。これは単なる金銭解決ではなく、一人の女性が「娘」であることを自ら捨て、自立への道を切り開くための、痛烈で孤独な儀式であった。