1994年の秋、鹿児島の郊外にある小さな布団店で、雅子と七歳の娘・雪が忽然と姿を消した。布団も食器もおもちゃもそのまま、ただ二人だけが消えたのだ。夫が長距離運転から戻ると、部屋はもぬけの殻。警察に失踪届を出したが、夫の実家は「家出だ」と主張。八年間、行方は霧の中だった。1988年、雅子は見合いで鹿児島のトラック運転手と結婚。姑・フ二子の厳しい視線の下、朝四時から夜十時までの過酷な労働が始まった。赤ん坊を背負い、泣く雪を抱えながらの作業も、姑は労働量を減らすどころか増やすばかり。雅子は実母・キヨコに「お母さん、本当に辛い」と漏らすしかなかった。絶え間ない抑圧と暴力の中で、雅子は生き抜く方法を模索する。誰にも気づかれず、静かに、しかし確実に未来を取り戻すための準備が、静かな夜の闇の中で始まった――。