私が所属する企画室の課長は、非常に穏やかな性格で知られています。部下の体調を気遣い、頼まれごとは決して断らない、いわゆる「お人好し」。しかしその優しさゆえか、部長からの無理難題も全て引き受け、部下に仕事を押し付けられても「僕が全部やるから」と一人で抱え込んでしまう始末。次第に部下からも軽く見られ、「あの課長は利用できる」とまで言う者もいるほど、頼りない印象が定着していました。そんなある日、社運を左右する大規模プロジェクトの最終プレゼンが、社長や副社長、専務ら首脳陣の前で行われました。プロジェクトリーダーである課長補佐が堂々と説明を終え、質疑応答に移った時です。専務から「この企画は無理だろう。競合も既に参入している分野だ」と、計画の根本を否定する厳しい意見が突き付けられました。会議室が静まり返り、課長補佐の表情がこわばった、その瞬間。