飛鳥時代の政治改革に尽力した中大兄皇子（後の天智天皇）は、一方で権力を掌握するために非情な手を用いた人物でもありました。彼の死後「天智」という名前がつけられた背景には、古代中国の王朝に由来する暴君としてのイメージが込められていたとされます。その一例として、政敵であった蘇我入鹿暗殺を主導し、その後も自らの脅威となる人物を次々と粛清しました。　高句麗への敗北を契機として国防体制の整備を図りつつも、内政では皇族や功臣との確執が表面化し、その影響で弟の天武天皇との権力闘争が激化しました。弟である大海人皇子は権力の網をかいくぐり吉野へ出家することで難を逃れましたが、弟とその子孫が後に反旗を翻し、天智天皇の築いた体制は人心の乱によって崩壊しました。　中大兄皇子は歴史の中で英雄とも暴君とも評価される複雑な人物であり、彼をめぐる事件やエピソードは日本史の重要な転換点となっています。