数年前、家族は崖の上に立っているような状態だった。父は長年の病で常に不調を訴え、兄は社会との接点を完全に断った引きこもり。母が亡くなったとき、家族は壊れた。一応父と兄の二人で生活をしていたが、それは決して「生活」と呼べるものではなかった。そんな中、俺は結婚を機に新しい生活を始めるために家を出た。数年後、警察からの連絡でその静寂が破られる。「お兄さんと思われる方が亡くなっています」。言葉を聞いた瞬間、俺は全てを悟った。父が亡くなり、その後兄が一人で家に残された事実。そしてその先に訪れた孤独、一切生活の目処が立たない日々。それを放置していた自分。警察から聞いた兄の最後の状況は凄惨だった。水道も電気も止められたまま、熱い夏に放置された兄の姿。「俺は兄を見捨てたのか」。その問いが頭を離れない。最期に見た兄の姿は、家族の終焉そのものだった。俺たちは本当に「家族」だったのか。吐き気が止まらないまま、もう戻れないこの現実に直面している。