科学が描き出す、ロマンと現実が交差する4万年前の物語。最新の遺伝学研究が、ネアンデルタール人と現生人類(ホモ・サピエンス)の関係に、驚くべき新事実を提示している。私たちのDNAの約2%はネアンデルタール人に由来するが、その「混ざり方」に極めて不自然な偏りがあった。それは、両者の出会いがほぼ「ネアンデルタール男性 × サピエンス女性」という一方向に限られていたという事実だ。逆の組み合わせの痕跡はほとんど見つからない。なぜ、これほどまでに非対称なのか? その謎を解く鍵はX染色体にあった。従来説では、ネアンデルタール人の遺伝子が「有害」だったため自然淘汰されたとされた。しかし、ペンシルベニア大学のプラット博士らがネアンデルタール人女性のゲノムを分析した結果、彼女たちのX染色体には、サピエンス由来のDNAが異様に多く含まれていることが判明。これは、何世代にもわたってサピエンス男性の遺伝子がネアンデルタール人集団に流入し続けたことを意味する。従来説は覆された。