夫が亡くなってからまだ三日目の朝でした。疲れ切った体に香典の匂いが染み付いているその日、玄関には黒いスーツに身を包んだ息子の嫁、美穂さんが立っていました。表情は冷たく、手にはビジネスバッグを握りしめ、まるで仕事の交渉にでも来たかのようです。彼女は第一声から核心に触れる言葉を口にしました。「お母さん、遺言書はどこにありますか?」私は驚きを隠せませんでした。夫がこの世を去ったばかりで、私の心もまだ彼の記憶の中に漂っていました。「遺言の話は、四十九日が終わってからにしましょう。」そう答えながらも、美穂さんの目の奥に潜む焦燥感に気づきました。実は、遺言書の存在を知るのは私だけでした。夫が病に気づいた三年前から密かに準備を進めていたその書面。彼が望みを託したその内容がどんな運命をもたらすのか、美穂さんはまだ知らないのです。