こっちの賢人は、幼い頃から兄のような人気者になりたかった。兄のニス田将生が歌詞デビューしたとき、その成功が彼の心に大きな影を落とした。「兄なんかに負けてたまるか」と思いながらも、音楽さえも兄に取られたと感じ、ショックを受けずにはいられなかった。アカペラの全国大会で優勝したとき、兄が自分のように喜んでいる姿を見て、自分の小ささを痛感した。必死に頑張って上場企業に就職したけれど、家族が兄の活躍を喜ぶたびに羨ましさが募るばかり。無理をしすぎてついにうつ病になった。そんな暗闇の中、彼は孤独と向き合い作った曲が話題を呼んだ。「死永末」は、彼にとっての再生の音楽だった。