彼の人生は不運の連続だった。生まれてから一度もお風呂に入れずに成長したという、信じがたい運命の持ち主。最初は家の給湯器が壊れ、次には水道料金が払えず断水。そんな中、彼はなんとか生活を続けてきた。学生時代、プールの授業のシャワーすらも故障。社会人になってようやく社員旅行でお風呂にありつけるかと思いきや、訪れた場所は北千地の険しい民族地帯で風呂に入ることもできず。不運は続くばかり。しかし、ある日、彼に転機が訪れた。病院で最期の願いとして用意されたお風呂。ついに、念願のお風呂に飛び込んだ彼。長年の不運を感じさせることなく、その湯は彼を包み込んだ。温度は少しぬるかったが、彼の心は確かに温まった。