ロンドンの街を自転車で颯爽と走る若者の姿に驚かされる。それは、まだ皇太子時代の天皇陛下である。1983年から2年間、英国オックスフォード大学に留学された陛下は、他の学生と同様に、一人の若者として生活された。日常生活では思わぬ困難に直面された。例えば、洗濯機に下着を詰めすぎて泡だらけにしてしまったり、慣れないアイロンに手こずったりすることもあった。しかし、そうした失敗もまた貴重な学びの場であったのだ。この経験は、陛下の謙虚な人柄を育む一助となった。ロンドンのデパートでレジに並び、自分で支払いを済ませるという日常の一コマは、日本国内では体験することのない新鮮さであった。クレジットカードにサインをする際には、最初は戸惑いながらも慣れていったという。このような自立した生活の中で培われた誠実さと謙虚さが、現代の国民に寄り添う天皇陛下の姿勢の基盤となっている。