薄暗いカラオケボックス。響き渡る妹の歌声。選曲はアニソンの定番、アップテンポなナンバーだ。ノリノリで歌い上げる妹の姿を眺めながら、私は悪戯心を抑えきれなくなった。私はこっそりと操作パネルに手を伸ばし、BGMの音量をゼロに。妹は気持ち良さそうに目を閉じ、高音パートに差し掛かっていた。伴奏が消えた瞬間、彼女の表情は固まった。 響くのは、妹のやや音程を外した歌声のみ。空気が張り詰める。数秒の間、何が起こったのか理解できなかったのだろう。ゆっくりと目を開けた妹の顔は、みるみるうちに赤く染まっていく。妹の真っ赤になった顔は、今日のカラオケで一番の思い出になったことは間違いない。