日本には県境が未確定の地域が十箇所以上存在しており、その代表的な例が富士山の山頂付近です。富士山は静岡県と山梨県の県境に位置していますが、その境界については古くから明確ではありません。江戸時代の文献には「8合目より頂上に至り、両国の境なし」と記されており、当時から県境が存在しない状況が確認されています。明治時代には国が県境調査を試みましたが、静岡県と山梨県の双方がこれに異議を唱えました。その後も両県は独自の提案を行いましたが、議論がまとまることはありませんでした。そして、2014年に富士山が世界文化遺産に登録された際、両県の協議の結果、県境を定めない方針が正式に決まりました。現在、富士山山頂の土地は「富士山本宮浅間大社」の私有地とされており、山頂にある郵便局や気象観測所の住所は静岡県に属しています。この地域が持つ歴史的背景は、富士山という日本を象徴する存在にさらに興味を引き立てています。